宮原医院 心療内科
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お知らせ

●第31回 「2012日本産業精神保健学会に参加して」

非常に蒸し暑い中、大阪まで行き学会に参加して来ました。しかし、この学会は年々規模が小さく、活気も乏しくなってきているような気がします。それは単に、僕の様な下々の者が、発表も質問もしないからなんでしょうが、これは言い訳ですが、僕の様に認知症を専門に何年もしていますと、どうしても、この学会のような内容は自信がなくなってきます。それで、質問一つとっても、「こんなこと聞いたら、『なんて当たり前のことをこの人は聞いたんだ。質問時間も限られているのに!』などと、他の人が気を悪くするんじゃあないか、或いは本当に多くの人が聞きたい、有意義な質問の時間を、奪ってしまうのではないか」などと考えてしまうと、なかなか質問さえできないものです。その代わりといっては何ですが、認知症の学会の時は近年は積極的に質問するようにしております。

さて、毎年この学会での一番の楽しみである、N先生の講演を今年も聞くことが出来ました。今回もユーモアたっぷりに勉強になるお話が聞けましたので一部ご報告します。尚、毎回おことわりしておりますが、今回も僕なりの解釈なのでもしかしたらN先生の真意とは異なるかもしれませんので悪しからず。

今回は、職場不適応の見方と対処という、非常に現代社会に即したタイトルです。お話を、僕なりの理解で解釈しますと、(1)職場でのトラブルでうつ状態にある人が増えてきたが、その3割はうつ病によるもの、4割は適応障害によるもの(=職場不適応症)、1割は人格障害によるもの、残りは統合失調症その他であり、産業医は主治医の診断書の「うつ状態」という記載=うつ病とは思わないこと(上記のどれでも「うつ状態」は起こりうる)。(2)最近新しい用語が次々と出現してきており、紛らわしいが、この適応障害と「逃避型うつ病」「職場うつ病」は、ほぼ同義語で、その中でうつ病の定義も満たすものが「新型」或いは「現代型」と呼ばれているうつ病である。(3)うつ病と適応障害の違いは、前者が仕事への不安がないか少しだけあるのに対し、後者は非常に強い、前者は休日、勤務日に関わらず悪いのに対し、後者は休日にゴルフに行ったりできる、前者は抗うつ薬が効くのに対し、後者は効かないが、代わりに配置転換が有効なことが多いことなどが挙げられること、(4)先生のデータでは、復職は少なくとも9割の人ができたこと、薬やカウンセリング、配置転換、上司の特別な配慮などで72%の人がうまく行っていること、(5)一度の配置転換は大企業なら許されるところが多いが、中小企業では転換先が少なく、難しいことが多い(6)配置転換は希望先を第1〜3まで書いてもらい、その中で企業に決めてもらい、その希望が通っても同じことが起これば、転職を勧めている(7)一度の配置転換に企業が応じることは裁判対策にもなり、そういう意味でも企業にとってもメリットが多いのですべき、(8)今後もこういった問題は社会情勢、社会形式の変化などでどんどん変わっていき、精神科医はその都度、対応が求められるだろうなどなど・・・・。

このような問題は、現在大きな社会問題になっており、このコラムでも第14回に書かせていただきました。そのコラム通りに今も僕は仕事をしているつもりですが、今日のお話を聞いても、概ね似た内容で、自分の患者さまへの対応、治療はもちろん僕のできる限りにおいてですが、間違っていなかったなと、自信を持てました。職務内容や、職場での人間関係などでうつ状態に陥っても、何病によるうつ状態かを正しく診断し、適切な投薬、アドバイス、家族への説明を間違ってしまうと、結果が思ったようにはなりません。また、長引いてしまっても、家族が納得できるものか、不信感を持たれるかも、ここが合っているかどうかで大きく変わってきます。こういったことは、関わる医師のみならず、保健婦さんや家族、会社の上司なども把握してくだされば、皆が幸せな結果となる確率が上がると思いますので、今回のお話を胸に留めておいていただければ幸いです。僕も普段の講演活動では、老人性うつ病、認知症をお話することが多いのですが、このようなお話を聞くと、企業や、役場保健婦、或いは開業医の先生相手に若い方のうつ状態の絡みの講演を頼まれれば、必ずしなければいけない内容だなと思うのです。本当にこの10年で、職場不適応症がめちゃくちゃ増えています。N先生のデータでは、職場のうつ状態で病院を受診された患者さまの4割が職場不適応症とおっしゃっておりましたが、僕の感覚では、若い人(40代まで)で言えば6〜7割の印象です。10年前まではうつ病が7〜8割程度を占めたのではないでしょうか。急激に、日本社会によくも悪くも色々なことが変わってきている証拠だと思います。また、日本人の美徳も大きく変わってきている証拠だとも思います。何が昔より良くなって、何がおかしくなってせちがらい世の中になってきたのか。検証し、良いとところは伸ばし、反省すべきところはすべき時がきているのではないでしょうか。最後は、選挙に出馬する前の政治家のようになってしまいましたが、とりあえず今日は、この辺で。

2012年7月14日

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