宮原医院 心療内科
 トップページお知らせ(コラム)>老年診療内科のミニ勉強会  第14回「日本産業精神保健学会に参加して」
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●第14回「日本産業精神保健学会に参加して」

 梅雨のうつうつとした天気が続いておりますが皆様いかがお過ごしでしょうか。さて、僕はお仕事の休みを頂き、6月29-30日と日本産業保健学会(名古屋)に参加してまいりました。興味深いものもありましたのでその一部をご紹介します。

 特に興味深かったのは、精神疾患で仕事ができなくなった患者さんの職場復帰についてのシンポジウムです。スムーズに復帰できる患者さんはいいのですが、残念ながらなかなか職場復帰できない患者さんもみえます。そういった患者さんへの対応について話し合ったシンポジウムでしたが、ある統計では、精神疾患による休職者のうち最も多かったのは、病名では気分障害で、年令では20-30代、休職期間では3ヶ月未満でありました。事業主から見ると、求職者本人の責任感、社会常識、病識に問題があるとみる傾向が強く、次いで産業医と精神科主治医との連携が問題という意見も多かったとのことでした。また、大企業に比べ、中小企業・零細企業の特徴としては、(1)大企業のように精神科専門職の医師が産業医としているところと比べて、いないところは様々な観点から統計を取ってみても差がなかった(つまり精神科専門の産業医を置いてもあまり差がない)、(2)そのかわり、中小企業・零細企業においては、人事の担当者が少ない医療常識の中でその役割を担わなければならないことが多く、一人で抱え込んでしまうケースが多いので、そういうポストの人へのサポート、教育が大事である、(3)こういった疾患の患者さんへの理解、対応は、事業主の意思に大きく左右されるというものでした。

 また、今年オープンしたリワーク(復職)センターを紹介した発表もありました。それはデイケアの枠内で、自立支援法の保険を利用して受けるサービスで、週3回以上は通い、自信の回復、助け-助けられの経験を積み、人に頼ることが下手な人はそういった練習もして社会復帰を促すというものです。基本的にはその個人にあったプログラムを作ってしてもらえるようで、何かと考えられているようです。そこで統計も取っているのですが、そこでは、(1)いわゆるうつ病は比較的社会復帰しやすい(2)職場不適応によるうつ状態の人はうつ病の人と比べてやや社会復帰が難しい(3)家族の理解が乏しい人は難しい(4)依存的、自己愛的な性格傾向がある人はやや復帰が困難というものでした。

 また、産業医の立場から職場復帰が難しい人の問題点も提案されました。それは、(1)職場の問題:特に上司の理解度とその対応が大きな問題となることがあるというものですが、最近そういった患者さんへの対応の手引きなるものができており改善傾向にある(2)患者さん本人の問題:特に甘え、人格障害、アルコール依存、精神的な発達障害が絡むとその対応はいろいろ考えなければならない(3)主治医の問題:精神科医としての腕が問題のこともあるし、会社との連携が問題なこともある(4)制度上の問題:短時間勤務、リハビリ出勤などの制度が会社によっては無い所もあり、企業努力が必要なところがある。また、全体的な底上げということを考えても、国がそういった整備をもっとしてもいいのでは?(5)その他:家族の理解を深める、経済的なフォロー、というものでした。

 どの発表も最近のトピックスとしては、うつ病と、適応障害による抑うつ状態では、その復職具合から治療法まで違いがあり、その区別をつけて対応することが大事であり、事業主としても、過保護に患者を擁護するためにこういった活動が必要なのではなく、人材を有効に活用するには、こういった人をうまく使いことが結局会社にも利益になることが多いということでした。ただ、こういった疾患にあぐらをかいている患者さんも実際は存在します。患者さんには基本的に休職中に定期的にはその病状を報告する義務があり、また、休職中は治そうとする義務も併せ持っており、それらの義務を全うしてはじめて休職してその手当てをもらえる権利があるということも忘れてはなりません。そういったモラルも守ることは必要であるし、会社としてもそういったルールを休み始めに患者さんに徹底して伝え、実行してもらう努力もあることも最後に付け加えさせていただきます。こちらも肝に銘じておきます。それでは今日はこの辺で。

2007年7月2日

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