宮原医院 心療内科
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宮原医院 心療内科所在地

〒519-2704
三重県度会郡大紀町
阿曽2270

電話:0598-86-3555
Fax:0598-86-3505

休診日
水曜・木曜・日曜・祝日・土曜午後

診察時間
9:00-12:00/14:00-17:00
※1 土曜は9:00-12:00
※2 午前11時からの1時間と午後2時からの1時間は、初診の方専用の診療時間とさせて頂いております

お知らせ

● 第24回 「2011 日本老年精神医学会(2)」

(1)の続きです。

いまさら人に聞けないシリーズというのがありまして、ある意味認知症専門医であれば知っておかなければならないことばかりなのですが、多くの先生が完全には理解していないであろうことを集めて講演が行われました。その中で、特殊な認知症のお話が興味深かったので少しお話を。認知症の原因としてアルツハイマー、レビー小体型などが花形で、実際頻度も高いのは事実ですが、それ以外の原因でおこるものも見落としてはいけないというお話でした。僕自身、COPD(呼吸器系のもの)、甲状腺機能低下症、貧血などには細心の注意を払っているつもりですが、僕自身あまり注意していない疾患のお話もいくつかありました。それは、

(1)AIDS脳症
ご存じエイズを発症して後期になって脳症を合併し、認知症になるというものです。最近では化学療法が発達し、エイズも死なない病気とまでは言いませんが慢性経過をたどる病気となり、それに伴い脳症が増えてきたというものです。カリニ肺炎といわれる独特な肺炎、ホモセクシャルな性癖の方(患者さんの2/3は実際こういった性嗜癖があるようです)では一応こういった目が必要です。

(2)神経梅毒
これも有名な梅毒の後期(発症して10〜25年後)に起こる認知症で、Pick病のような前頭、側頭の症状主体ですが、CT上は異常なく、大事なのは目です。縮瞳を言って瞳孔が小さくなっており、しかも光を当ててもそれ以上瞳孔は小さくなりませんが、より目をさせるとより小さくなるのが特徴です。こうなれば血液検査をして梅毒反応が陽性であれば、神経内科に髄液検査をしてもらい、ペニシリン注射で2週間でかなり良くなるようです。

(3)PML(進行性白質脳症)
抗がん剤や免疫抑制剤を使っている人(エイズやリンパ腫の人が多い)がその治療後認知障害が出てくると疑います。CTでは異常が出にくく、MRIでは検出できるようです。メプキンというマラリアの治療薬がかなり良くなるようです。

(4)ビタミンB1欠乏症
人はビタミンB1が欠乏してくると脚気になるか、ウェルニッケ脳症という意識障害、歩行障害、認知障害が特徴で水平方向に眼球が動くよう誘導すると眼球が震える(眼振といいます)のも特徴です。アルコール依存症、過度のダイエットなどで疑い、ビタミンB1の注射で数時間で改善しますが、そのあとコルサコフ症候群といわれる病態へ移行する人も多く、注意が必要

(5)C-J病
医師にはヤコブといわれている患者さんです。僕も数年前に松阪市内の神経内科に紹介したことがあります。後頭葉に病巣があることが多いため視覚的な異常(物が歪んで見えるなど)を訴え、眼科受診し白内障もあるからそのせいかなということでよく白内障の手術をしています。その後急速に進行し、すぐに動かなくなって死に至ります。CTでもろれつが悪くても喋れたり、歩けるうちは異常が見当たらず、動けなくなりミオクローヌス(顔などの筋のピクつき)が出るころには急速に委縮したCT画像となりますが、初期のうちでもMRIでは異常が出るようです。現在でも救えない病気ですが、肝心なのが髄液だけは感染する可能性がある病気ということです。殊に先ほど白内障という話をしましたが手術器具を使いまわしていれば、違う人に移る可能性があるわけでCJ病と分かった時点で白内障所術をしている患者さんであれば、その手術を受けた病院に連絡し、同じ器具を使った患者さんがいれば、その人も発症しないかフォローしなければいけない、という点が非常に重要ということでした。眼科医への連絡までは僕も気が付かず、今後気を付けたいと思います。(あくまでも年間日本で100人程度の稀な病気ですが・・)とにかく視覚異常を訴える人は要注意です。

(6)Sneddon症候群
あれこれと聞いているうちに知らない病気を耳にしました。あれ?そんな名前、聞いたことない!恥ずかしいのかな?と、より集中して聞いておりましたら、認知症専門医は全身を診なければならないという話でこの病気の話になりました。足などに網状の模様(網状皮斑)が出ており、CT上、ただの脳梗塞の小さいのがあるようなら、その脳梗塞は血管炎と関係のあるもので、ステロイドのパルス療法という特殊な治療をしなければならず、ただの脳血管性認知症の治療ではだめだというものでした。足の網状皮斑か・・・網状皮斑?そういえば最近その言葉を耳にしたことがある、というか網状皮斑自体を最近見た!椅子から立ち上がりそうになりました。あの時は新患で見えた患者さんが、足がおかしいから見てほしいといわれ、実際足を見てみると両足にその奇妙な皮斑がありました。正直見たこともないもので皮膚科を勧めましたが,皮膚科医はこたつかストーブをすごく近くで当たっていたせいでおこった軽いやけどというものでした。その後すぐに学会会場を抜け出し、近くの大型本屋さんの皮膚科、神経内科のコーナーでこの病気を調べましたがほとんど載っておらず、かなりマイナーな病名のようでとりあえず僕が知らなくてもそれほど恥ずかしいことではなさそうだとホッとしましたが、そうは言いましても、僕の患者さんにその皮斑がある以上、調べなおす必要があると思い、本を片っ端から調べたところ、Sneddon症候群自体はほとんど見つけられなかったものの、皮膚科の本で網状皮斑自体はわずかですが発見できました。それによると(1)確かに軽いやけどでも出るがその際は赤っぽい網状で、Sneddonのそれは、青っぽい〜紫のものであること(2)そういった色の皮斑は、Sneddonでも見られるが、パーキンソン病でも、アマンタジンという、パーキンソンの薬の副作用でも報告例があるようです。いずれにしても、恥ずかしながら、その後僕がその足自体を見ていないという現実を恥ずかしく思いました。帰ったらすぐにその方の足を診よう、まだあるようならやけどではないので、CTを確認し、脳梗塞もあるようならこの近くでの高名な神経内科を紹介し皮膚科と連携してもらって治療してもらうのが一番よさそうです。もし、この方が本当にSneddonであれば、皆さんにもいつかの機会にお知らせしようと思います。

ほかにも面白いことをいくらか聞いたのですが、大変長くなってしまったので、今回のミニ勉強会はこれで終わろうと思います。このコラムは同僚の医師も読まれているとお聞きしておりますが、それ以上に介護士、看護師の方もよく読んでくれております。むしろ医師でない方も積極的にこういった特徴を知って頂き、ぜひ医師に進言あるいはアドバイスをしてあげてください。治療行為をできるのは確かに医師でしょうが、その患者さんを治療するのに必要な知識は、別に医師に任せず、ほかの人が出してもいいわけですから、皆で協力して知恵、知識を出し合いましょう。それぞれの立場の人がそれぞれのプライドを持って勉強しましょう。それでは今回はこの辺で。

 

平成23年6月20日

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