●第75回「当院閉院が近づき」

今年も春を告げるサインがあちこちで見受けられるようになってきました。皆さんお元気でしょうか、宮原医院副院長の宮原です。

さて、先述しました通り、本年3月末日をもって当院は閉院します。約20年間、父とこの地で働かせていただき、いろいろ勉強させていただきました。嫌なことがなかったと言えば嘘になりますが、それ以上に、はるかにいい思い出のほうが多かった20年でした。その内容を回顧し、この文面で綴ってしまいますと、守秘義務に抵触してしまうので言えませんが、どのような経験も、医師としての僕の礎を作ってくれた大事なものです。それらを生かして、今後さらに理想的な医師増を目指していきたいと思います。では、どのような医師を目指す？ということになりますが、一言で言えば、いかに患者様とその家族様に寄り添えるか、その一点だというのがこの20年で得た結論です。この20年、僕が主に診ていた高齢者の精神疾患は、認知症も含め、完治しない方も少なくない領域です。今、閉院準備の一つとしまして、転院される患者様の紹介状をせっせと書いているところですが、その数は昨日でついに250人を超えました。そのうちの77人が久居病院です。ここからだけでも、60キロ北上しなければならないほど離れた場所にまで、わざわざ来ていただける方がこれほど多いとは思いませんでした。感謝申し上げますが、なにぶん遠いので、くれぐれも無理はなさらぬようお願いしております。通院しているうちにこの距離が苦痛になれば、速やかに申し出てください、急いで紹介状を書いて近くの転院先を探します。逆に、現時点で他院への転院を決められた方もおられますが、今後、もし僕のところで再び診療をと思われる方もおられるかもしれません。実際に診察室でこの地での最後の診察の際に、そうなったらどうしたらいいかを聞いて来られる方もたくさんおられます。その際には、まずは久居病院へ問い合わせてほしいとお願いしております。ことをややこしくしているのは、僕は基本的に、老年精神専門医として久居病院さんに雇用されているという点です。その分野で久居病院に来られる方に於かれましては、何年かの後に来院されましてもスムーズに診れると思うのですが、高齢でない方に関しましては、場合によっては高齢患者様が優先となる可能性があるかもしれません。でもこれは僕が勝手に想像している部分もあり、実際に今後の様々な要因によって変わってくることだと思いますので、だれにも何とも言えないところかと思います。なので、その時に問い合わせだけでもしていただければ、その時の状況によってできる限りのことをさせてもらう、としか言えませんことをご了承ください。

話を戻しますが、紹介状をたくさん書いていますと、いかに多くの患者様が、長きにわたり通院を続けて頂いていたかを痛感しました。15-20年間通院している方も決して珍しくありませんでした。実感としまして、それほど長い方は、それほど多くない印象だったのですが、思った以上に多くの方が長く、しかも断続的でなく継続的に通院していただいておりました。その方々の中には、残念ながら病状がなかなか良くならない方も多々おられます。そういった方のつらさを軽減させるため、患者様、その家族様に寄り添って共感したり、あーでもない、こーでもないと少しでも有意義に生きられるように議論したり助言したり、時にはされたり。教科書的な知識を増やすことも大事でしょうが、このようなことこそ大事と考え腐心してきた20年だったと思います。今後もその気持ちを大事にしていこうと思います。紹介状を書きながら、このようなことを考えている今日この頃です。それではこうはこの辺で。

2024年3月12日