宮原医院 心療内科
 トップページお知らせ(コラム)>副院長のひとり言 第37回「施設での処方」
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宮原医院 心療内科所在地

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水曜・木曜・日曜・祝日・土曜午後

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9:00-12:00/14:00-17:00
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●第37回「施設での処方」

もう桜の咲く季節となりました、すっかりこのひとり言もサボっておりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。副院長の宮原です。久しぶりに、衝撃的なことがあったので、今回はそのことをお話ししようと思います。

先日、ある認知症の患者さんがある施設へ入るという運びとなったので、家の人から紹介状を書いてほしいという要請がありました。その方はアルツハイマー型認知症の方で、その場にそぐわない行動をしてしまい、ボヤ騒ぎなどを起こしておりましたが、記憶障害は抗認知症薬の効果か、中等度程度で止まっておりました。しかし、一人にしておけないということで入所の運びとなったのですが、その際の紹介状で僕は、「認知症は中等度で非常にゆっくりしか進んでいないので、もし入所後問題行動が出てきたら、今の抗認知症は中止しないでメマンチン(抗認知症薬が出ている人が、更に進んできた時、厄介な症状が出てきた時に追加する抗認知症薬です)を追加することをまず試みてください」と丁寧に書いたつもりです。通常はそこで患者さんやその家族ともお別れで、その後はどうなったかわからないことが多いのですが、その方は、入所後どんどんQOL(生活水準の質のことです)が落ちていったため、家人があわてて退所させて入所中の処方をみたところ、抗認知症薬が抜かれておりました。家族にも何の相談もなく抜かれていたのです。それで、「今からまた飲みだしても間に合うのでしょうか」と再来院されたので、薬が抜かれたことが判りました。記憶検査上記憶障害は重度まで進んでしまい、診察時には態度を取り繕うくらいのことは出来たのですが、それも出来ないくらいに変わり果てておりました。こういったことは老人保健施設でよくあります。老人保健施設は、介護度によって報酬が決まっているので、どんな介護をしようがどれだけ薬を出そうが、施設としての利益が上がるわけではありません。逆にいえば、薬を出せば出すほど損をします。そして、抗認知症薬というのは決して安くはないので、入所後、真っ先に抜かれる、というパターンが多かったのです。老人保健施設の経営はどこも厳しいと思いますので、これは仕方ない面もありますが、老人保健施設以外の施設では嘱託医や、配置医と呼ばれる医師に来てもらい、処方をされています。それは、一般的に医療保険での診察、処方になるわけで老人保健施設とは違い、経済的なことは関係ありません。その医師の考え方がすべてとなっております。しかしながら、何度も言うようですが、その医師のポリシーが何であれ、その医師なりに理由、理屈があって処方されている薬を抜くわけですから、少なくとも家族には納得できる説明をしたのちに、抜いてもらいたいと思います。僕も他院で抗認知症薬が処方されている患者さんが当院に移ってきて抗認知症薬を抜くことがあります。それは、もはや認知障害が重度まで進んでおり、更に周辺症状が激しい方のケースです。そういった場合、抗認知症薬の進行を遅らせるという効果はあまり期待できず、むしろその薬のせいで興奮させてしまっている可能性があると疑うから抜くのです。こういったケースでも、家族にその旨を話し、納得して頂いたうえで抜きます。今までは施設入所に対して特別こちらが「どこがいい、悪い」というようなことは言わないでおきましたが、こういったことが起こる施設には、今後あまりお勧めできなくなり、こちらも悲しいです。しかし、事実は事実として、患者さんやその家族には知る権利がありますのでお伝えしていこうと思います。当該施設の方におかれましては、「自分のところだ」と思い当たるでしょうが何分ご了承頂きたいと存じます。最近では抗認知症薬の必要性がより高まり、老人保健施設に入所しても、抗認知症薬を抜かない、あるいは入所後に施設長(老人保健施設は医師でなければなりません)自身が処方するような施設も増えてきました。今やそんな時代で、専門医としてはそのような事実を隠すことは出来ないのです。

2012年4月11日

 

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