宮原医院 心療内科
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宮原医院 心療内科所在地

〒519-2704
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阿曽2270

電話:0598-86-3555
Fax:0598-86-3505

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水曜・木曜・日曜・祝日・土曜午後

診察時間
9:00-12:00/14:00-17:00
※1 土曜は9:00-12:00
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お知らせ

●第47回「第38回日本老年精神医学会(秋季)に参加して」

史上最高に暑い9月が終わり、ようやく過ごしやすい季節がやってまいりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか、宮原医院副医院長の宮原です。さて、毎年行っている日本老年精神医学会ですが、なぜか今年は2回開催され、秋の部にも参加してまいりましたので、例によりまして少々お裾分けをしようと思います。また、例によりまして、僕の個人的な見解が存分に入ってしまい、演者の意図するものではない理解の仕方をしているかもしれませんので、話半分としてお聞きいただければ幸いです。

  1. まず、教育講演「老年精神医学と多職種連携」の、なかでも、歯医者さんが「認知症の人の口腔」という発表をされていた内容が面白かったです。要約しますと、痛くなってから歯科受診では、痛くてろくな治療も難しいだろうし、たいへんなことが口腔で起こっていても、認知症患者さんは自分でそれを訴えないことも多いので手遅れになることもあるので、ぜひ定期受診を勧める、という話でした。口腔機能低下は、低栄養、フレイル、認知症の原因になりうるし、逆に認知症が歯を悪くもすることもわかっています、といったことをまずはご説明され、後半は、様々な症例報告をお聴きしました。具体的には、乾燥剤を食べたせいだったり、錐体外路症状のせいでカマ(下剤です)が長時間口腔に残っていたせいだったり、或いはカルシウム拮抗薬、抗てんかん薬の副作用のせいだったりで、ひどい口腔内潰瘍を来した症例や、骨粗鬆症の薬で下顎骨が露出してしまい、入れ歯すると痛がる、入れ歯を吐き出すといったことを繰り返されるケースなどです。結論としましては、ぜひ多職種連携のメンバーに歯科も入れてください、定期受診をご考慮ください、また、施設では入所時検診するようにすることもお勧めします、と言った内容でした。確かに、看取る時でも、亡くなった際に口腔内が臭いと遺族がショックを受けるようで、ケアをしているとそういったショックを受けなくていいと思われ、口腔ケアは実際に厳かにできないなと思いました。
  2. 次にランチョンセミナーにて関東のある先生が認知症のアジテーションとは、というお話をされてました。定義上簡単に言えば、「不安が行動化し、感情的苦痛を伴って、その結果落ち着かない、易刺激性の亢進などを生じるもの」らしい。これではわかりにくいですが、具体的に言いますと、身体的苦痛があったり、常同症のせいだったり、薬剤性であったりという、他の原因なく、過剰な運動(動き回り続けるなど)、言語的攻撃性(大声で叫び続けるなど)を有する状態のことのようです。アジテーションの頻度としては、施設入所認知症患者の26-33%と言われていたり、認知症クリニック通院患者の45%とか、地域の在宅認知症患者の15-48%と言われていたりで環境によってその頻度はマチマチです。また、精神科病院入院を決めるのは、アジテーションが最も大きな要因となっているようです。責任病巣としては、前頭葉-辺縁系ということは言えそうですが、大まかにしか言えないのが現状のようです。また、アジテーションがあればあるほど認知症は進行しやすいということも分かってきました。治療としては、まずは非薬物療法をまずは試みて、ダメなら薬、が世界的な流れになっているようですが、アジテーション、幻覚・妄想、大うつ病の3つは切迫性ありと判断し、いきなり薬から始めてもいいようです。ここで一つ面白いデータを発表しますと、アジテーション患者を9ヶ月プラセボ(例えばビタミン剤やただの砂糖といった、薬の成分が入っていないものを「薬かもしれない」と言って患者に渡すものです)だけを投与したところ、60%の患者が良くなったというデータがある。何を言いたいとかというと、薬を出しても効かなかった、或いは副作用しか出なかったら、どんどん薬を強くしないで一旦薬を抜いて計9ヶ月様子をみるというのもかなり有意義な手ということ。家人などが疲れ果てたら入院などさせて家人を休ませ、患者にも何もしないというのもあり!60%はそれでも良くなる計算になる。しかも、その後元の場所(自宅など)に戻してもほとんどその症状の再燃を見ないそうです。どうしてもうまくいかなかったらこの手を使おうと思いました。でも、病棟看護師をどう説得するかが問題ですが…。

それでは今回はこの辺で。

2023年10月16日

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