宮原医院 心療内科
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宮原医院 心療内科所在地

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お知らせ

●第46回「第38回日本老年精神医学会(春季)に参加して」

ようやくコロナが第5類となり、徐々に世界が徐々に以前の活気を取り戻しつつあると感じる今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか、宮原医院副医院長の宮原です。さて、今年の上記医学会はリモートでは参加できなくなりましたので久しぶりに現地まで赴き、学会に参加してきました。しかし、今年は無理やり現地開催にこだわり、リモートでは参加できないようにしたものですから、皆が会場に押し寄せ、それでいて思ったより発表が集まらず、限られた発表に多くの人が集まる結果となり、立ち見どころの騒ぎじゃあなく、立ちっぱなし覚悟でも入室さえできない発表もありました。というか、そんな発表ばかりで傍聴しようと参加した方はさぞかし大きなストレスを抱えながらの参加となったことでしょう。少なくとも僕はそうでした。しかし、そんな中でもいくつかの発表を聞いてきましたので、例によって差し障りのない範囲でおすそ分けをしようと思います。

金曜日の発表で興味をひいたのは、元国土交通省のお役人さんの街づくりのお話でした。いくら健康教室を保健師さんが開催しても、参加する人はもともと健康志向の高い人だけで、人口の約半数程度いると思われる健康寿命なんぞに興味のない人は、その様な運動をどれだけしても参加してこないそうです。その様な人を放っておいては、いつまで経っても国民全体の健康寿命が上がらず、それでは良くないよねってことで、お国も色々動いていた様です。まず2009年から、国を挙げて健康寿命を上げる活動が始まった様ですが、やはり健康維持には歩くことが大事という結論になり、そのためには、歩くのに快適な空間が身近にあること、車で行ける空間に制限を作ることで、車に頼りすぎないようにしていこうという計画となった様です。「健幸」な街づくり計画とかスマートシティ計画というらしいのですが、すでに我が三重県も参加している街があるようで、恥ずかしながら僕は知りませんでした。具体的には、開放的な公園(何をしても自由な芝生エリア、ベンチを置く、図書館や本屋などを併設するとなお効果的なことが多いようです)を設置したり、車禁止エリアをうまく作ることがミソのようで、これらは決して地方都市を見捨てるものではなく、むしろ地方の人たちの健康維持はもちろんのこと、消費や雇用を生みだし、地方再生にも繋がるはずだというのです。三重県も多くの駅前がシャッター街となり、閑散としている町ばかりですので、それらが再生されるのならいいなと期待しながら、拝聴させていただきました。

他には、今噂のアルツハイマー病疾患修飾療法の話も、専門医と名乗るからには知っておかねばいけないと思い、聴いてきました。一般の方でも、アデュカニュマブという、アルツハイマーの薬がアメリカで承認され、日本でも同薬の申請を今年1月にしたということが話題となり、さらにアメリカでは二つ目のアルツハイマー病疾患修飾薬(レカネバブ)も承認されたことが大きな話題となったので、こういった治療のことはご存じのことだと思います。僕も外来でそのような質問をたまに患者さんから聞かれます。そこで、その分野のシンポジウムがありましたのでその一部をお伝えします。

まずは多くの人が気になると思われる副作用を報告された先生がみえましたので僕なりに要約してみますと、こういった抗体でできた蛋白質を体内に入れると、輸注反応と呼ばれるものと、それとは別にこの薬独特のARIA(アミロイド関連画像異常)と呼ばれるものが一定数起こりうることは仕方がないようです。前者は大体26%の人に出て、具体的には発熱、悪寒、低血圧など多岐にわたるようです。後者は、約22%程度の方に出たそうで、脳血管にアミロイドの沈着が起こる結果、脳浮腫や脳出血が起こるというもののようです。アポタンパクE4のキャリアの人と、血液をサラサラにする薬を飲んでいる人には特に高率に出現する副作用のようです。こうやって書くと、かなり恐ろしい薬のように聞こえますが、こういった副作用の程度にはピンからキリまであるようで、だからこそ投与して半年は厳密なモニタリングが必要な反面、ひどい副作用が出なかった方、あるいはひどくてもその副作用が治まっていった場合は2回目も打ってもいい(一回注射してから2-6か月後あたりにもう一回打たなければいけないようです)ともなっているようです。なんだかコロナワクチンと同じような感覚で打っているイメージですね。

続いて三重県の先生が、そのアルツハイマー病疾患修飾療法を皆が平等に受けられるようにするために、その提供体制をどう作っていくかというお話をされました。昨年までお役人だった先生のようで、お国の政策に明るい先生のようでした。お国は当初、「予防と共生」を認知症対策の日本の柱と考えてきましたが、その後、ことごとく抗認知症薬の治験が失敗し、国の対策は認知症発症「予防」には期待できないため、認知症になっても安心して暮らせる「共生」一本にかじを切り、先述した「健幸」街づくりなどの政策を頑張り、さらに今月には認知症基本法が参議院を通過し、より「共生」しやすい街づくりが中心の法律ができようとしているさなか、2021年から立て続けにアルツハイマー病疾患修飾療法がアメリカで承認され、急いで「予防」にも力を入れなければならなくなったようで、その整備を急いでいるようです。日本ではその薬そのものが承認されていないので当たり前ではありますが、承認されたとしましても現時点ではどこでも誰でも打てるというわけではないという話でした。まずは、アミロイドPETという特別な条件下で画像が撮れること、腰から髄液を採れる技術を持った医師がいること、これが最低条件ということになるようですが、三重県でみましてもおそらく、認知症疾患センター指定を受けている病院でもできないところのほうが圧倒的に多いと思われます。この現状を、こういったアルツハイマー病疾患修飾療法が日本でも承認されるころには、国内のどこでもとまでは言いませんが、各県に2−3か所ずつくらいはできるところを確保したいところですね。個人的には、以前S製作所というところが、血中からアミロイドβの濃度を測定できるとかできないとかというお話を聞いたことがあり、その技術が確立できれば、画像診断はおそらくAIが現在急激に進化しており、アミロイドPETの評価は、おそらく遅くとも10年以内にはコンピューターがしてくれる時代となっていると思いますので、三重県内の認知症疾患センターならばどこででもその治療が受けられるようになるのではないか、と勝手に希望的観測をしております。実際、そうなるといいですね。それでは今回はこの辺で。


2023年6月20日

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