宮原医院 心療内科
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宮原医院 心療内科所在地

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阿曽2270

電話:0598-86-3555
Fax:0598-86-3505

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水曜・木曜・日曜・祝日・土曜午後

診察時間
9:00-12:00/14:00-17:00
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お知らせ

●第39回「第33回 日本老年精神医学会に参加して」

梅雨がもうすぐ明けそうで、両極端な天気が続いておりますが皆様いかがお過ごしでしょうか、宮原医院副院長の宮原です。さて、このコラムも更新されず、一年が過ぎようとしておりますので、久しぶりに更新しようと思います。この度も、老年精神医学会に行ってまいりましたので面白そうな話をご紹介しようかと思います。今学会も、近年マイブームだった光療法はもはや完全に姿を消したことや、一時ほどは多職種や初期集中治療の話がクローズアップされていないのが印象的でした。後者二つは、今回もちゃんとシンポジウムやランチョンセミナーとしては残っているのですが、口頭やポスターの発表なども前回まではかなり多かったイメージがありましたが、今回は、ほぼ無くなっておりました。熱が冷めたということもあるのでしょうが、僕の理解ではそのような悪い意味ではなく、こういった分野において、日本史上で未だかつてないほど、医師がすべてを仕切って行うのではなく、行政保健師や病院看護師、介護士、ケアマネ、PT、OT、ST、薬剤師、そういった方々が仕切る時代になったからだと思います。そのようにストレートに皆さんが言っているわけではないのですが、発表を聞いていますと、そういった雰囲気がひしひしと伝わってきます。アドバイザーとしての医師はまだ必要でしょうが、仕切ったり、主導したりというのは、発表を聞いていますとむしろ、医師がしない方がうまくいっている印象で、多職種連携という意味でも大変いいことだと思います。この、医師だけの学会で減っている分、日本認知症ケア学会とか認知症看護学会とか、日本ケアマネ学会など医師以外の方で構成されている学会で増えているのではないかと想像します。多職種や初期集中は前回書きましたので、今回は省略します。

では、今回の学会で何が面白かったかと申しますと、興味をひかれた一つ目の話題は、やはりパーソンセンタードケア(=以下PCCと略します)の話です。最近、ますますこの言葉を聞かれる機会は多いかと思いますので、この場で復習をしてみましょう。まず、PCCに基づいたケアの基本姿勢としては、患者さんの「パーソンフッド(一人の人として認められる、尊重・信頼されること)を高める」などとよく言われております。そのためには患者さんを@人として認め、Aその個人の独自性を尊重し、Bその人の視点に立ってみて、C相互に支えあう環境を作ることが大事だと演者の先生は力説されておりました。具体的・初歩的な例として、医師、看護師、介護士、家族、友人として認知症患者さんと会う際に、相手が自分のことを信頼していればいるほど、きちんと一人の人として会話してますか?目を合わせない、敬えない、などといった雰囲気を醸し出してしまっているだけでも、その患者さんにとって有害となり得る、というお話でした。こういったことは判っているつもりでも、つい日々の暮らしの中で忘れてしまっているかもしれない・・・と、身につまされる思いがしました。これを読んでおられる方で身に覚えがある方がおられましたら、お互いこういったことに注意して、頑張ってまいりましょう。

もう一つ、DLB(レビー小体型認知症)についてのお話をしたいと思います。多くの方はご存知の通り、このDLBという疾患単位は、正確にはレビー小体といわれるものが脳内にできていることで正確に診断されるのですが、生きている方の脳をスライスして顕微鏡で見るわけにはいきませんので、現実的には「possible(可能性あり)DLB」とか、[probable(おそらく)DLB]などといった表現で診断されます。その診断基準も年々変わっていき、ついに最新の診断基準では、probable DLBの診断を得ようと思えば、心筋シンチ、SPECTなどといった高度な検査を受けないとつかなくなってしまいました。つまり、当院のような弱小医院では、他院で頭部CTを撮っていただいて見せていただいたところで、「possible DLB」までの診断しかつかなくなってしまいました。これには正直がっかりです。確かに、高度な検査は、しないよりはした方がより正確に診断できるでしょう。そういった意味では、そのような検査を行う方が正しいと言えます。しかし、そういった検査までやっても、DLBの診断におきまして、[probable]という言葉はとれません。「possible」を、[probable]に変えるためだけに、一体いくらのお金がかかってしまうのでしょうか。ただでさえ、医療費は膨らみ、あるいは少子高齢化で保険料を納める人が少なくなった影響で、国民皆保険は崩壊しようとしております。そんな中でより安い検査で診断できるツールを皆さん探している中で、「この診断基準の改定は無いやろ〜」というのが僕の正直な心の叫びです。一方で、AD(アルツハイマーのことです)とDLBを鑑別する方法や、DLBとうつ病をできる、簡便でお金のかからない検査法を模索している人たちも、今回もちゃんとおられました。具体的には、嗅覚を利用してうつ病とDLBを鑑別したり、手首の固化徴候がSPECT画像と一致するといった発表などがありました。このような発表は、逆に僕のような立場の人間には大きな励みとなります。僕の目指す道は、こういったツールを複数利用し、より安価な方法で診断し、お財布にやさしい治療、ということで今までやってきましたが、それはこれからも変えるつもりはありません。もちろん、DLBが疑われる患者さん・家族さんには、SPECTなどの高度な検査までするかどうかを、たいてい聞いています。もちろん希望されれば、そういった検査が可能な医療機関にご紹介させていただいておりますが、希望される方は、大体5年に一人位といった頻度です。そこまで希望される方は、初めから大病院に行くのかもしれませんね。個人的には、DLBを想定して治療者が加療していれば、そこまでする必要がないと思います。今回の学会で新たなツールも見つかりましたし、今までのものと合わせてより手間とお金をかけない方法を模索していこうと思います。それでは、今回はこの辺で。


2018年7月6日

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