宮原医院 心療内科
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宮原医院 心療内科所在地

〒519-2704
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阿曽2270

電話:0598-86-3555
Fax:0598-86-3505

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水曜・木曜・日曜・祝日・土曜午後

診察時間
9:00-12:00/14:00-17:00
※1 土曜は9:00-12:00
※2 午前11時からの1時間と午後2時からの1時間は、初診の方専用の診療時間とさせて頂いております

お知らせ

●第38回「日本老年精神医学会に参加して」A

続きまして、2部です。

更に、認知症の予防とケアというタイトルにも惹かれて拝聴して来ました。発症予防には、@食事に気をつける〔地中海食または日本食がいい〕、A身体疾患をよくコントロールすること〔主に、高血圧、高脂血症、糖尿病〕、B運動〔やはり散歩でいい。3km以上、20分以上〕C知的活動〔テレビ見る、ラジオ聴く、本や雑誌を読む、オセロやトランプなどのゲームをする、博物館などに行くなど〕をなるべく多くする、といったことを複合的に継続的に行うことが大事と演者の先生は説かれておられました。ただ、これらを一人で継続してやって行くことは大変難しく、コツとしては、理想は認知症の発症年齢になるかなり前に、習慣化してしまってから、老年期を迎えるということでしょうが、そういった備えなく高齢になってしまった際には、周囲〔近所の人や家族〕が褒めたり励ましたり、一緒に行ったりしないとなかなか習慣化しないということでした。その通りだと思います。僕も常日頃、このような事はアドバイスさせてもらっていますが、家族の方は、「散々散歩しろと言っているのに、一向にしない」とか、「趣味を見つけなさいといっているのに全く探そうとしない」などと嘆かれていることがおおいのですが、なかなか現実的にはその言葉かけだけで行動に移せる方は少ないです。「習慣化するまでは、家族の方も、楽しんで一緒に考えて、行動も共にしてください。その方がはるかにうまく行くと思いますよ」と、言わせて頂いております。

それから、認知症のケアのお話へと移っていったのですが、そこでケアファームという概念があることを初めて知りました。要は、認知症の支援事業として、新潟県が畑の農作業を、京都では茶摘みを、東京町田市では洗車を通じて、自分の居場所を見つける、人と触れ合って刺激をもらえる、生きがいを感じられるなど、成功していると言ってもいい成果を上げているのを受け、今度は新潟県にて米作りでそのようなことが出来ないか試みた、というものです。このケアファームという試みは、まだまだ日本では少ないですが、欧米ではかなり積極的に行われているようで、日本にもようやくその波が来た、といったところのようです。良いところは、遊ばせている田んぼと、稲作に精通した指導者が一人居れば、あとは介護職員さんがいればできることと、田舎の地方であれば、多くの方が稲作の経験者であり、短期記憶に障害があっても、昔の記憶が残っていればできる方が多いということでしょう。実際には、一回90分を週一回、全25回〔約半年〕行い、苗植えから、稲刈り、収穫祭までの行程だったそうです。途中で暇になり、カボチャやナスも作り、雨の日はミーティングにあてたそうです。結果として医学的には大きなものはなく、せいぜい抑鬱傾向があった方が無くなった程度ですが、驚くべきはその出席率です。何と驚異の93%という高い数字が出ました。普通では考えられない数字です。僕らのエリアでも、使われなくなった田畑はいっぱいあると思います。今なら、辛うじて米作りにも茶畑にも、畑にも精通している方の多くは心身共にお元気です。逆に今こそ、こういった動きをしなければ、10年後にやろうと思ってもその頃では厳しいと思います。施設の方〔積極的にデイサービスとして活用する、など〕や、行政の方〔こういった話の啓発活動、田畑、茶畑などの提供者、作業を指導してくれる農家の方を探す、それらの人に補助金や報酬を出す、など〕に期待したいところです。

最後に、認知症初期集中支援チームの現状と課題というシンポジウムも聴いてきました。これまた私ごとですが、僕自身が大紀町のチームのメンバーになっているので気になり聴かせて頂きました。僕はまだ、そのチームとしての活動機会はありませんが、熱心にやっているところの現状が知りたかったのです。拝聴して第一の感想としましては、「まあ、熱心にやっている所は、本当にすごく頑張っているんだな」というものです。消極的な自分が恥ずかしかったくらいです。4人の方が発表され、それぞれに特徴があったのですが、共通しているのは、包括の職員さんや役場の保健師だけで介護のルートに乗せられない、いわゆる「支援困難者」が主な対象であるということ、それ故に病識が欠如しており、病院受診に繋げるどころか、チームの訪問さえも門前払いされることも珍しくない人たち相手に、どうやって介護或は医療に結びつけていくか、皆さんそれこそ四苦八苦されておりました。医師が中心となって医師自身がどんどん訪問している発表もありましたし、看護師や作業療法士が主で動いているケースもありました。このチームを国が作れといってきたときに、「医師は基本的にはそのチームの相談役」で、実働部隊というよりは、アドバイザー的な役割として居なさいとなっていたはずですが、どうやらそれだけではいけなさそうで、実際には訪問前に、じっくりとどのような性格の方が今回の対象者で、何が問題で、どうアプローチしていくのが一番うまくいく確率が高いかを話し合い、医師を含め最も適したメンバーをその都度決めて訪問する、というのがいいようです。そのため、メンバーは多職に渡っていればいるほど訪問メンバーの選択肢が増え、そういった意味では認知症疾患センターとなっている精神科病院にそのチームがあれば、必要であろう様々な職種の職員がいるわけですから、理想的です。我がチームに精神科病院ほどの人的資源を入れることは不可能ですが、それでも理学療法士さんには入ってもらった方が良さそうだと思いました。わが町にも、理学療法士さんはいると思いますし、薬剤師さんや歯科医さんもいますもんね。

2部にわたって、また、例によって長文で読みづらかったでしょうが最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。今回はこの辺で終わろうかと思います。ご精読ありがとうございました。


2017年6月19日

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