宮原医院 心療内科
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宮原医院 心療内科所在地

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●第29回 「2012 日本老年精神医学会に参加して(1)メマンチンの発表〜当院の評価と比較して〜」

梅雨真っただ中のうっとおしいこの季節にまたまた老年精神医学会がありました。今年は埼玉県さいたま市までいってきましたが、遠かった分、実りもありましたので例により、皆さんにもおすそ分けをしようと思います。今回は、かなり専門的なお話ですので、認知症にお仕事としてかかわっておられる方を中心にお読みいただければ幸いです。

まずは、昨年から使用できるようになった新しい抗認知症薬の発表が早速ありましたのでご紹介します。昨年一挙に3種類の抗認知症薬が認可されましたが、おそらく専門家が最も注目していたのがメマンチンでその発表を二つ聞きましたのでご紹介します。

一つめは、メマンチンを認知症の患者さん46人に投与したところ、 アルツハイマー型の方では認知機能、生活機能が悪化、イライラ、不安は改善するという結果に。DLB(レビー小体型認知症)、FTLD(前側頭型認知症)の患者さんでは、イライラ、穏やかさなどが良くなり、悪くはならなかった、と言いましても、DLBでは20mgは、意欲低下、血圧上昇、頭痛が出やすく、減量しているとのこと。逆にFTLDはドロップアウトがなく、20mg/日まできっちり使っても副作用が出なかったとのこと。結論として、思ったより副作用が多かったこと、DLBでは10mg/日がちょうどいい人が多かったこと、逆にFTLDはメマンチンに強く、特に、不安、イライラ、介護負担が強いFTLD患者に20mg/日、同様のDLBには10mg/日がいいのでは、つまりは、20mg/日の処方量を維持量としなさいという決まりはなくして欲しいという発表でありました。解説をしますと、薬の認可が下りるときに、適正要領というのが定められまして、このメマンチンは許可の際に5mg/日からはじめ、1週間ごとに10-15-20mg/日と上げていき、それ以降は20mg/日を投与することで許可が下りました。ということは、10mg/日で調子良かった人が、それ以上上げていくにつれて副作用などが出現した際には、この薬はあきらめるか、副作用が出ながらも20mg/日を投与し続けなさいということです。どのような薬も多すぎるといいことはなく、上限量を決めることはとても大切だと思いますが、こと抗認知症薬では一番最初に発売されたドネペジル(商品名アリセプト)のときから、このような問題が頻繁に論じられ、僕自身下限量を設定するのはどうかと考えている一人です。なぜドネペジルでさんざん下限量の設定が批判されていたのに、それから10年以上たって発売された昨年の3剤とも下限量があるのか、理解に苦しみます。このままでは現場の僕らはもちろん、家族も薬に失望し、この薬は毒だという評判が立ち、結局誰にもいいことがないと思うのですが。僕自身も機会があれば、この下限量の設定には異を唱えていきたいと強く感じました。また、薬に対する効果も、今回の発表は僕のデータとほぼ同じであり、共感する部分が多かったです。もっとも、このメマンチンの減量投与(20mg/日未満)に関して現場では、おそらくどこでもすでに行われていることと思われます。

もう一つメマンチンの発表がありました。アルツハイマー型認知症の22人の患者さんを三ヶ月経過を追ってみた発表でした。 副作用は40%に出現(ふらつき9% 眠気31% など)で治験では33%だったが今回それより多かったとのこと。また、陰性症状(無意欲、抑うつなど)には効果的だったが、特に、中等度以降進行した患者さんでは、かえって介護負担が増えたという結果になりました。ちなみに当院のデータでは、42例中、副作用発現率は66%(2012.6.6現在です)で、中止に追い込まれたのが56%という数字で、やはり思っていたよりかなり多い副作用発現率だなという印象です。特に、血糖上昇が気になっていたのですが、どちらの発表でもその話はありませんでした。たまたま当院で診ていた人がなっただけかもしれませんが、今後話題になるとかもしれませんので、皆さんは念のため測っておきましょう。ただし、劇的にADLが改善する方も多いということも僕の手ごたえとしては印象強く、決して悪い薬だというわけではなく、うまく使えるかどうか腕が問われる薬だと僕は理解しております。話が長くなりましたので第30回に続く

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