宮原医院 心療内科
 トップページお知らせ(コラム)>第28回 「第107回日本精神神経学会に参加して」
コンテンツ
お知らせ
診療案内
クリニックの紹介
交通案内
健康サポート
宮原医院 心療内科所在地

〒519-2704
三重県度会郡大紀町
阿曽2270

電話:0598-86-3555
Fax:0598-86-3505

休診日
木曜・日曜・祝日・土曜午後

診察時間
9:00-12:00/14:00-17:00
※1 土曜は9:00-14:00
※2 午前11時からの1時間と午後2時からの1時間は、初診の方専用の診療時間とさせて頂いております

お知らせ

● 第28回 「第107回日本精神神経学会に参加して」

もうすっかり秋になりました。最近は毎年秋らしい時期が短く、夏と思っていたら急に冬になったという感じの移り変わりが多いのですが今年もそんな感じになりそうですね。副院長の宮原です。さて今月、日本精神神経学会へ行ってきました。いくつか面白い発表がありましたが、その中の一つを例によって僕なりの解釈でご紹介します。
ここ最近は、この学会では自殺関連の報告を中心に回っておりました。といいますのは、僕自身が三重県の自殺予防のプロジェクトにかかわっていたからです。一応行政的なお仕事で、責任も重大だなと思ったのでこんな時くらいは勉強しなければと思い、その関連発表を見て回っておりましたが、一応の成果が出たということでそのワーキンググループが解散となり、ようやくお役御免となりましたので、今回は本来の専門である認知症関連の講演を中心にお話を聞いてきました。ふと目に留まったのが、「うつ病と認知症の間」というタイトルのシンポジウムです。実はこの2疾患は専門にやればやるほどその鑑別の難しさに悩まされるというくらい、特に初診時の診断は苦労します。実は先ほど述べました、自殺予防の協議会、ワーキンググループの会合でも、うつの早期発見ばかり目を向けていても、認知症との鑑別が難しいので、いっそのことその両方を拾えるようなスクリーニングをして、引っかかってしまった方はより詳しい検査をして、異常なし、うつの疑い、認知症の疑い、あるいはどちらかの疑いとして専門の医療機関あるいはかかりつけ医に紹介するようなシステムを構築することを提案しましたが、その重要性、必要性はその現場にいた医師も行政の人もあまり実感はないようで、僕もその瞬間から悪い意味で肩の力が抜けてしまった思い出があります。でも、毎年のように、老年精神学会関係ではこの種のネタがシンポジウムで用意されており、いかに難しい課題かということは専門家の間では有名な難題なのですが、なかなか僕の周りの人には理解してもらえません。愚痴はこれくらいにして、今回その難題に対するシンポジウムの内容をご紹介します。

いろいろなことを研究したり、レビューを紹介したりしておりましたが、なにせ難題ですから決めつけるような結論はあまり出ておらず、インパクトのあるタイトルをつけては「?」という書き方で結論付けている締め方が多かったのですが、その中でほぼ決定的と結論付けれそうだということだけをご紹介しますと、(1)うつ病の既往がある人が認知症になる確率は、既往のない人に比べて高い(1.7倍程度)。(2)(1)の既往のある人の中で細かく調べると、若いころ発症の人が老年期発症の人よりもリスクが高い発表とその逆の発表がある(3)アルツハイマー型認知症はうつ併発率は20%(ここではうつ病でなく、うつ状態の話)と低くなく、昔の、「深刻そうな表情で認知症があったら脳血管性、多幸的(にこにこしていること)であったらアルツハイマー」とは言い切れないこと(5)うつ病の人が認知症のように見えることをうつ病の仮性認知症というが、仮にその診断が合っていたとしても、その病態を経験した人は寛解1年後には3%の人が、2年後には12%の人が、さらには5年後には50%以上の人が認知症になっていく(6)従来はむしろ脳血管の危険因子といわれていた高血圧、肥満、糖尿病、低身体活動(運動不足)は、アルツハイマーでも危険因子であり、それらの改善が有意にアルツハイマーの発症も抑えること(7)高齢発症のうつ病患者でMRI上、脳血管に障害があった人はない人に比べ、抗うつ薬をやめられない人が多い(高齢発症のうつ病というだけでも1年は良くなっても薬を続けた方がいいという発表が以前ありましたが、脳血管障害のあるうつ病の方は3年以上は必要ということらしい)(8)高齢発症のうつ病患者を無治療でほおっておくと、海馬が委縮する確率が高まる。これらが全般的な話題で、レビー小体型認知症(以下DLB)に関してはより掘り下げて発表されていました。具体的には、(9)DLBは全認知症患者の20%を占める病気でその6割以上の方が発症当初からうつ状態を併発(10)それゆえ、老人性うつ病と最も鑑別が難しいが、それでも鑑別法を探っていくとREM睡眠行動障害(ねぼけ) の有無、起立性低血圧、失神など自律神経症状の有無、少量の抗うつ剤投与で錯乱状態、錐体外路症状(パーキンソンなど)過剰な反応を示すかどうか、高炭酸換気応答検査(高濃度のCO2を吸わせ、換気量の変化を見る)で換気量が上がるかどうか、というようなことをわかりやすく紹介していただきました。ことに最後のDLBとうつ病の鑑別ですが、最も興味引いたのが、最後の高炭酸換気応答試験です。これは、健常者、アルツハイマーの方、うつ病の方ではCO2濃度を上げていくに従い換気量が上がっていくのですが、DLBの方では上がらないというものです。また、DLBのかたはその発症前からこの検査で換気が上がらないらしく、早期発見、発症する予測さえも検討をつけられる可能性があるというもので、患者さんに痛みも伴わず、時間も短く済むらしいので、実際どこで受けられるのか、いくらかかるのか、その鑑別のために検査してくれるのかなど詳しく調べてみようと思います。使えそうなめどが立てば、またお知らせしようと思いますのでご興味のある方はお楽しみにしていて下さい。また、すでに詳しくご存じの医療関係者の先生がおられましたらご教授ください。よろしくお願い申し上げます。

ここまでの発表を聞きながら、また無念さが募ってきました。これだけ専門的にやっている人が頭を悩ませている問題に、なぜ皆直面視し、その対策を話し合うことをしないのか、物忘れ検診、あるいはうつの早期発見のための検診は全国の自治体で行っております。その中にはうつも認知症も拾えるようなスクリーニングを行っているところもたくさんあり、今回の三重県の対策は、そのターゲットの少なくとも一部は高齢女性でありました。高齢の方であれば、当然目を向けるべき問題と僕は思いますが、最終的には認知症対策は別の部署でしているという雰囲気が強く、僕の意向もいくつかは取り上げてもらえましたが大部分は叶いませんでした。昨年の自殺率は三重県は全国でもいい意味でトップとなり、その改善率も1位でした。この後、認知症とうつ病の鑑別をないがしろにしたせいで、また急降下ということがないことを祈りつつ、今回はこの辺で終わろうと思います。長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。

2011年10月31日

  Copyright © MIYAHARA CLINIC. All rights reserved.
サイトマップ リンク お問い合わせ