宮原医院 心療内科
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お知らせ

● 第22回 「第25回 日本老年精神医学会に参加して」

いよいよ梅雨らしい、うっとうしい季節になってまいりましたが、皆さんお元気ですか、宮原です。この、ミニ勉強会のコラムも長らく更新していませんでしたので、今学会で目に付いたことを差し障りの無い範囲で書いてみようと思います。

(1)
ある精神科救急を受け入れている大病院での統計では、救急搬送されてきた患者さんのうち、65歳以上の方で、統合失調症と診断された患者さんのなかで、さらに細かい分類をしてみたところ、「遅発性(つまり40歳以上で発症したとされる)統合失調症」と診断された方が、1/4以上いたという発表には驚きました。今までは、統合失調症の方の多くは、20代までに発症する方がほとんどと言われていたのですが、確かに最近は新聞紙面でもこの、「遅発性〜」と言う話が出たりするので増えてきているのかなとは思っていましたが、ここまで高い数字とは思いませんでした。もっとも、この中の何割かは、経過を追っていくと、のちに「結局は認知症の前駆段階であった」と、診断が変わる方もおられると思いますので、まったく鵜呑みにすることは出来ないでしょうが、それにしても高い数字です。

(2)
ドネペジル(アリセプト)の少量投与の問題は、この学会の「第24回に参加して」コラムでもお書きしたとおり、だんだんタブーではなくなりつつあると感じることが多い今日この頃、ついに今学会では演題タイトルに「ドネペジルの少量維持投与の〜」と言う言葉が使われました。この学会では初だと思います。しかもその内容は、「ドネペジル5mg/日で、副作用が強く出てしまった患者さん(徐脈、消化器症状、怒りっぽい、パーキンソンのような症状など)に薬自体をあきらめるのではなく、少量で投与すれば、その副作用の80%は消え、効果も期待できる」と言うもので、しかも、その発表をしたのが、都内の国立の認知症を専門にしている医療センターの先生でした。その先生に発表後いろいろ質問させていただいたのですが、お国のほうにも、少量投与を働きかけていくようで安心しました。と、言いますのもこのアリセプトは決まった量があって、それより多いと問題なのは当たり前としても、少なくてもレセプト上、睨まれるのが、臨床家としましては非常に厄介なのです。近いうちにこのような先生方の研究により、改善されればいいなと思いました。

(3)
その反面、今学会では、パーソン・センタードケアの文言が目立ちませんでした。何かあったのかと思うほど、目立たず、水野先生にでもお聞きしようと思っていましたが、お会いする機会がありませんでした。

(4)
新薬の発表も目を引きました。ある、最近発売された抗うつ薬をレビー小体型認知症の患者さんに投与したところ、焦燥感(いらいら)が強いうつ状態に著効したという発表がありました。このお薬は副作用が少ないのが売りですが、眠気が強く、それをかなりの量まで上げて使ってみえましたが、レビーの方は日中まで眠気が残るといった、悪い影響は今の所ないと言われておりました。しかし、実際にレビーでない高齢者に使ってみても、僕の患者さんの中にはかなり日中まで眠気が残る方が少なくなかったので、この意見には今の所僕は賛成できかねますが、興味ある発表ではありました。続報に注目していこうと思いました。

(5)
最後に個人的に興味を持っていたのは、MCIについてです。これは正常と認知症の境界のような概念で、明確な診断が難しいもので、よりわかりやすい指標となるものはないかとこの学会でも探しておりましたが、結論としてはありませんでした。その代わり「山口キツネ・ハト模倣テスト」という発表があり、それほど明確にではないかもしれませんが、約20秒でMCIまたは軽度認知症を検出できるかもしれないというスグレモノらしく、実際の診療の場でも、接触さえ図れない患者さんには、使ってみようと思いました。簡単に言うと、影絵で使う「キツネ」を検者がやり、非検者にもまねしてもらいます。これが10秒以内に出来ない人は重度まで進行している可能性があり、それが出来たら次に検者が「ハト」を両手で作り、それを10秒以内にしてもらうというものです。正常者の方は9割以上の人が出来ましたが、MCIで出来た人は42%、軽度の認知症ではなんと23%まで正答率が落ちたと言うのです。

例によってこれらの知識は、僕自身が発表者ではないので、正確ではない可能性があります。医師などがもし医療の場で実践、または論文などに利用されることがありましたら、責任は持てませんので、発表者の論文などを入手していただくか、ご本人に問い合わせをされることをお勧めします。もし、どなたの発表かわからなければ、それをお教えすることは僕にも可能かと思いますが。それでは今回はこの辺で。

2010年6月26日

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