宮原医院 心療内科
 トップページお知らせ(コラム)>老年診療内科のミニ勉強会  第17回「第104回 日本精神神経学会に参加して」
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宮原医院 心療内科所在地

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Fax:0598-86-3505

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水曜・木曜・日曜・祝日・土曜午後

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9:00-12:00/14:00-17:00
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お知らせ

●第17回「第104回 日本精神神経学会に参加して」

 皆さん、うっとおしい時期(梅雨)が今年も近づいてまいりましたね、宮原です。先月末から今月末まで、僕の学会シーズンが始まりました。僕の所属する学会は偶然にもこの時期に集中して開催され、何日も休ませて頂くことになり、患者様には大変ご迷惑をおかけしていることと存じます。何卒ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。というわけで、少しでも知りえた情報を皆さんにも僕の解釈で恐縮ですが(間違っているかもしれませんが)ご紹介しようと思います。
さて、一昨日まで日本精神神経学会に行ってまいりました(東京です)。精神科の学会としては国内でもっとも大きな学会であり、大盛況でした。その中で興味深かったお話を3つご紹介します。

(1)
まずはロボットの話を。介護ロボットができて一部試験的に実用化されている話題をこの前テレビで見たことがありましたが、学会ではさらに、RO(リアリティーオリエンテーション)を行うロボットの話が紹介されておりました。ソニーが開発しているようです。ROとは、話し合いをしていく中で現実検討識を鍛え、認知症の発症予防、進行予防をしていく集団療法の一つで、古くからある手法なのですが、なんとその司会進行を人がやるよりもロボットがやるほうが長続きする人が多く、効果も期待できる可能性があるという発表でした。ロボットがするなんて人間味がない、などと考えたりもするのですが、自分が受ける立場になれば、よく言えばロボット相手のほうが恥ずかしくなく、また、興味を持って参加できる人がいてもおかしくないのかなとも思います。いずれにしてもまだ研究は始まったばかりですので、今後の成果が楽しみですね。

(2)
認知症の早期介入の妨げになっているのは、驚くことにケアマネを含めた介護職の人の影響があるという発表をされていたことも印象的でした。あまり認知症のことを家人などに言うと家人・本人さんによっては、後々の関係が気まずくなることを嫌がって言えないのではないかという推測がされておりました。座長の先生が「そのケアマネさんたちの認識不足・勉強不足なのでは」などという発言もありましたが、僕らのいる地域ではそれは少なくとも最近は、あまり感じなくなりました。でも言い方は学んでほしいと個人的には思います。そういった話を今月志摩市で話す立場ですので、身が引き締まる思いで聴いていました。

(3)
最後に裁判の話を一つ。弁護士の方が講演してくださったのですが、自殺された患者様のご遺族が担当医師に「自殺を防げなかったのは、あなたのせいだ。訴えてやる」といって裁判になるケースというのが最近いくつかあるそうですが、その弁護士さんの見解、過去の判例はどうなっているのかというお話でした。結論としましては、世の流れとしてどんどん患者さんの人権はもちろんのこと、意志も尊重されるようになってきており、むしろ、過剰な身体拘束、監視のほうが問題となるのであって、いくらか治療のために必要な自由を認めた上で自殺されても、それは結果であって、いわゆる結果責任は問われるべきではないと言うのが一般的なようです。もちろんこれは入院中の患者様のケースであって、外来診療ではさらに責任は民事的には問われないだろうと思われます。もちろん、論外の治療をしていたら問題となるでしょうが、良かれと思って治療したことがその結果が最悪だったとしても、ということです。でもそれは今の裁判所の見解ではそうなのであって、陪審員制度が始まるとどうなってしまうのかが心配です。その弁護士さんは、裁判所の見解は上記のようだが、マスコミや一般に人はどうやらそう理解していないようだとおっしゃっておりました。と言うことは、一般の人が陪審員を務めたらその限りではないと言うことか?と心配になってきました。また、インフォームドコンセントの大事さもその弁護士さんはおっしゃっていました。インフォームドコンセントとは、事前に詳しく説明し、その治療の結果こういうことが期待できる、あるいはこういうことは防ぎきれない場合があるということを細かく説明し、納得いただいた上で、治療を始めるというものです。もちろん最悪のことが起こったあとにも、事後説明をしっかりすることも、あわせて大事だともおっしゃっておりました。これは医療だけでなく、例えば施設(老健、特養、グループホームなど)も然りだと思います。施設とその入所者の家族のトラブルもよく聞きますが、たいていは「死ぬまで預かります」、「どのような精神状態でも追い出したりしません」、「入所者さんがどこか連れていけと言われればどこでも連れて行きますよ」などと、出来ないことを「事前説明」しておくと、そうではない結果となったときに問題が起こってくるのです。やはり、お預かりする以上は、責任を持って事故が起にくい体制を作るのが当たり前ですが、それでも防ぎきれないと予想されることに関しては「そのような場合にはこうさせていただくこともある」「こういうことは残念ながりありうる」と言うところまで説明し、「それでは困る」と言う入所者、あるいはその家族に対しては、他のところをあたって頂く、という体制にしなければ、トラブルは耐えないし、それこそ裁判でも危ないということになると思います。

以上簡単に3つのトピックスをご紹介しました。さて、今週は日本産業精神保健学会で大阪に飛びます。また外来を休診させていただき申し訳ないのですが、得てきた知識をいくつか後日ご紹介しようと思います。それでは今回はこの辺で。

平成20年6月2日

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