宮原医院 心療内科
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宮原医院 心療内科所在地

〒519-2704
三重県度会郡大紀町
阿曽2270

電話:0598-86-3555
Fax:0598-86-3505

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水曜・木曜・日曜・祝日・土曜午後

診察時間
9:00-12:00/14:00-17:00
※1 土曜は9:00-12:00
※2 午前11時からの1時間と午後2時からの1時間は、初診の方専用の診療時間とさせて頂いております

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● 老年心療内科のミニ勉強会
 第11回 「日本産業精神保健学会に参加して」

 外来も休ませていただき、また、三重大学の同門会も出席せず、第13回日本産業精神保健学会に参加してまいりました。最近の学会はどんどん専門医だの、認定医だのと資格をくれるのはありがたいのですが、学会に参加し続けないとその資格を継続できないのです。ですから毎年行かなくてはなりません(この学会でも「専門職」というのを頂いております)。
 そして今年は6月2−3日にありましたので東京まで行ってまいりました。その中でこの地域にも役立ちそうなお話がありましたので、簡単にご紹介したいと思います。

 秋田産業保健推進センター所長の齋藤先生が、「秋田県における自殺予防対策について」という発表をされました。以下はその発表を自分なりにまとめたものです。あくまでも「自分なりに」ですので、齋藤先生と僕がまとめたものとの間にいくらか僕の主観も入ってしまっているかもしれませんがご了承ください。
  なぜこの話に興味を持ったかというと、僕自身この地域(伊勢保健所の管轄(つまり度会郡、伊勢市、志摩市、玉城町、度会町などなど))の自殺予防プロジェクトのメンバーであり、今年に入ってから第1回目の会議があり、どうやっていくか話し合ったのですがなかなかまとまらず、行政の方も頭を悩ませていたのが印象的だったからです。このコーナーも関係者が時々読んでいるというので参考までにまとめてみました。

 秋田県は平成7年から今までずっと自殺率が全国で1位なのでそうです。ちなみに上位は東北の件が例年占めており、三重県はベスト5にもワースト5にも入っておりませんでした。
  そこで、齋藤先生らは、この数字を何とか改善しようとご尽力されているようです。まず統計をとってみたようですが、男性:女性の割合は、2.5:1でした。男性では40−50代に多く(特に50代)、女性では高齢者に多かったということです。これは全国共通の数字だそうです。

 動機としては警察の発表によると、1位は経済苦、2位は身体的病を苦にして、3位は精神疾患という数字となりましたが、WHOの発表では、9割に何らかの精神疾患があり、その中の2割の方しか、精神科関係の病院、クリニックを受診していなかったという統計があるようです。
 秋田県では1割の方しか受診していないようです。
 それから、自殺、精神疾患というと、うつ病と決めつけがちですが、齋藤先生の外来で過去の自殺例を病名別で見てみると、最も多かったのは、統合失調症、ついで神経症圏内の病気、人格障害の次にうつ病でありました。あと、一般的にはアルコール関連の疾患も自殺率が高いということです。

 また、高齢者は自殺を完遂できる手段を選び、若い人ほど未遂に終わりやすい手段も選択するということもわかってきました。あと、つれあいや近所の人が自殺した場合、その近くにいた人もする可能性があったり、配偶者や子供などごく近い人に自殺された人はその後2年は自殺する危険度が高いこともわかってきました。
 さらには自殺場所は自宅が最も多く、AMとPMの4時からの数時間に集中しているようです。自殺された方の性格は「まじめで几帳面」な方が多いようです。

 こういったことを踏まえて、各分野の人が協力し合って自殺予防をしていかなくてはなりません。秋田県では、まず、行政のスタンスとして、(1)社会全体で臨む、(2)社会的救急事案として臨む、(3)医療関係者、教育関係者、産業界、警察、民間活動などが協力し合ってやっていく、ということを掲げました。
 具体的にはシンポジウムを頻回に開く、警察と労働局との情報交換の場を作る、相談窓口を多く作る、自殺予防マニュアルの作成、マスコミを利用した予防キャンペーンを行う、保健師を教育し巡回してもらう、というものです。この窓口作りのキモは、そこに相談しても必ず精神科医が後ろについている体制を作ることだともおっしゃっておりました。

 医師会では、(1)精神疾患の治療、(2)身体疾患患者の精神的ケア、(3)県民の理解を求めるための社会的活動、(4)自殺企図者の遺族の精神的フォローを基本スタンスとし、具体的には、うつ病治療を中心とした医師の勉強会(これがかなり大事な上に困難で、わざわざ、手帳まで作り研修して頂いたうえで、一般医と専門医とのネットワークの確立を目指した)、県の自殺関連予防相談支援センターの設立、地域での自殺予防講演、保健師対象の勉強会(特に対応の仕方などを勉強してもらったり、保健師用のマニュアルを作った)などです。

 大変な努力をされているなと思いました。特に他科医師との連携は実際開業していますと大変難しいのが現状で、かなり強く医師会などが呼びかけないと難しいなと思いました。その中で研修手帳まで作り、年間3−5回も研修してもらっているというのは、口で言うのは簡単だけど、実現させるには多大な努力が必要だったことでしょう。頭が下がる思いです。

 三重県でもまだ始まったばかりです。皆さん、協力し合ってより過ごしやすい楽しい社会にしていきましょう。
 今回は長くなってしまいました。最後まで読んでくださった方、お疲れ様でした。

2006年6月6日

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