● 老年心療内科のミニ勉強会
第7回 「日本老年精神学会」に参加して
診療をお休みさせていただいて、6月17、18日に日本老年精神学会(東京国際フォーラム)に参加してきました。その中で興味深い発表があったので、皆さんにもご報告します。
実際の臨床の現場でも良く迷うのが痴呆患者さんの免許停止問題です。2002年6月に道路交通法が改正され、痴呆患者さんは行政から運転免許を停止または取り消されるようになりましたが、実際はいまだ多くの方が運転され、悲惨な事故になっているのをよく耳にします。
というのも、法律では改正されたものの、厳格な基準がなく、また、多くの一般の方も知らないというのがその原因と思われます。そこでいろいろな調査を行った発表がありましたので、いくつかご紹介します。
(1)まず、「痴呆患者は運転を止めるべきか」という質問のアンケートをとりました。結果は、車がないと困る、当院近辺のような山間部の方でも、91.6%の人が「はい」と答え、社会的にも痴呆の患者さんは運転すべきではないと認識されてはいることが証明されました。
(2)同じくアンケート調査で「運転中止の決定を誰がするか?」という質問には山間部では「本人」が27.5%、「家族」が65.1%、「医師」が31.3%、「行政機関」が18.9%という結果で、行政機関が止めることを知らない人が圧倒的に多いという結果になりました。
実際70歳を超えると免許更新時に簡単な模擬運転の検査がありますが、そこで立ち会った免許センターの職員に「もう危ないから止めといたほうがいい」と勧められても、深刻身なく取り繕い、結局乗ってしまう痴呆の運転手もいるようです。
(3)現在の免許中止の流れは、免許更新時の病状アンケート(法律上うそを書いてはいけないことになっている)で異常があるか、警察(公安)・家族からの通報で免許センターが検査して、おかしければかかりつけ医の診断書を請求したり、その場で違う医師が緊急的に検査し、取り消しか更新を決定するというものだが、実際はかなりあいまいとなってしまっているようです。
(4)医師が中止を勧める基準もあいまいとなっており、痴呆があっても、実際の運転上支障がなければ、止めないとか、痴呆と診断された時点で止める医師までさまざまなのが現状で、どの時点で止めるよう勧めるかという基準が医師のほうにも必要と思われます。
(5)実際問題、今の時点でもっとも有効な流れとしては、家族が公安に相談し、免許センターで実車テストなどしてもらい、必要ならかかりつけ医の診断書など書いてもらえば、運転中止命令がでるというものです。(実車テストの費用は「県民の安全上必要な検査」という名目で、ただのところが多いようです。また、同じ名目ですぐにしてくれる県が多いようです。)
とにかく家族の方が積極的に動き、このようなことをしていかないと現在の法律でもなかなか止められないのが全国的な現状であることを再認識させられました。
2005年6月20日
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